全身への健康被害
歯周病が引き起こす様々な全身疾患
歯周病は歯を失うトップの原因を占める病気で、それ自体でも十分に恐ろしい病気ですが、1990年代の終わり頃より全身的な病気との関連性が次々に明らかになってきました。
日本では成人の8割がかかっているともいわれている歯周病は、誰にとっても無関係な病気とは言えません。
歯周病を治療することで、歯の喪失を防げるだけでなく、体の様々な病気を予防できる可能性があるので、歯周病治療は体を健康にしていく治療だとも言えるでしょう。
歯周病が関連していると言われている病気
歯周病の原因菌は歯の周囲組織を破壊しますが、歯周病菌やその産生物は、血管や呼吸器、消化器を通して全身のあちこちの臓器にも運ばれていきます。
現在歯周病と関連があると言われている全身の病気として、次のようなものが挙げられます。
● 狭心症・心筋梗塞
歯周病にかかっている人は、そうでない人と比べてこれらの心疾患にかかりやすいことがわかっており、重度の歯周病ほどリスクが高いということが報告されています。歯周病菌とその産生物が出血部位から血管の中に入り込むと、血管の壁に沈着物を形成します。そしてそれが剥がれると血栓となり、心臓の血管を詰まらせると、狭心症や心筋梗塞が引き起こされると考えられています。
● 脳梗塞
心疾患の場合と同様、歯周病菌とその産生物が血管壁に血管沈着物を作り、それがはがれて血栓になって脳の部分で詰まると、脳梗塞を引き起こします。
歯周病の人はそうでない人に比べ、3倍近くも脳梗塞のリスクが高まると言われています。
歯周病の人はそうでない人に比べ、3倍近くも脳梗塞のリスクが高まると言われています。
● 糖尿病
歯周病はかつてより糖尿病の合併症の一つに数えられており、糖尿病の人は歯周病を起こしやすいということは知られていました。
ですが、近年、その逆の関係、つまり歯周病の人は糖尿病にかかりやすいということもわかってきました。
つまり、歯周病と糖尿病は相互関係をし合っている、非常に深い関係があると考えられています。
ですが、近年、その逆の関係、つまり歯周病の人は糖尿病にかかりやすいということもわかってきました。
つまり、歯周病と糖尿病は相互関係をし合っている、非常に深い関係があると考えられています。
● 誤嚥性肺炎
特に高齢者において、飲み込む機能が低下した人、反射機能の低下した人の場合、食事や睡眠中に唾液が気管のほうに行ってしまうことがあります。
そして唾液中に含まれる歯周病菌により、肺炎が引き起こされることが明らかになっています。ちなみに、誤嚥性肺炎は高齢者の死因の上位を占めています。
● 早産・低体重児出産
妊婦さんが歯周病にかかっていると、歯周病菌とその産生物が胎盤に影響を及ぼし、早産や低体重児出産を起こすリスクがあります。
歯周病による早産・低体重児出産のリスクは、飲酒や喫煙によるリスクよりも高く、歯周病にかかっていない人の7倍にも上ります。
● 消化器系疾患
歯周病が胃のほうに行くと、腹痛や下痢、嘔吐などの消化器症状を起こすことがあると言われています。
これは、歯周病菌が胃の中にいるピロリ菌と共通する抗原を持っているためだと考えられています。
● アルツハイマー型認知症
認知症の中でも多いタイプのアルツハイマー型認知症は、脳にアミロイドβと呼ばれるたんぱく質が蓄積することによって起こると言われています。
歯周病菌はアミロイドβの生成・蓄積を促進することが分かっており、結果的にアルツハイマー型認知症を起こしやすくすると考えられています。
● 関節リウマチ
歯周病菌の一つであるP.gingivalis(ジンジバリス)は、周囲のタンパク質の形を変えてしまう作用があり、それを取り除こうと免疫細胞が働き、リウマチが引き起こされると考えられています。
このように、歯周病は非常に多くの病気とかかわっており、現在でも次々に関連する病気が見つかってきています。
今や、歯周病を放置することは、歯を失うだけでなく、全身の健康状態をも悪化させるものなのだという認識を持つことが大事です。
歯周病は年をかかるとひどくなる人が多いので、老化現象だと思われていることがありますが、実は生活習慣病の一つで、予防が可能な病気です。
ぜひ、全身の健康を守る意味でも、歯周病ケアを意識して行っていくようにしましょう。